冬の帰り道には、中華まんが似合うわよね、やっぱり。ほかほかしていて、手があったまって。空に向けてのぼっていく白い湯気を見ているだけでも、温かくなった気分になる。 学校帰りの買い食いは禁止されているんだけど、部活で疲れてお腹が空いた私と兄さんは、コンビニに寄って中華まんを買った。 いつもは夕飯を残すとお母さんに怒られるからこんな事しないんだけど、今日はお母さん家に居なくて、「適当にお弁当とか買って食べて」なんて言われてたから、気にする必要もないし。兄さんがぶら下げてるコンビニ袋には、私たちの夕飯になるお弁当が入ってる。お弁当をレジに出した時、我慢できなくて中華まん、買っちゃったのよね。 私はピザまん、兄さんは肉まん。兄さんは中華まんを食べる時、必ずと言っていいほど肉まんだけれど、飽きないのかなあっていつも思ってる私だったりして。 でも、そうやってこだわっているのが、すごく兄さんらしいとは思うけど。 「兄さん」 「なんだ」 「そっちもおいしそうよね」 「……食うか?」 兄さんは顔にありありと「しょうがねえなあ」って表情浮かべて、それでも優しく笑って、私の口元に肉まんを差し出してくれた。 「ありがと」 私は遠慮なく肉まんをひとくち。 ああ、やっぱり肉まんとあんまんって、永久の定番メニューだけあって、いつ食べてもおいしいわよね。 「はい、兄さんも」 私は腕を伸ばしてピザまんを兄さんの口元に運んだんだけど。 「いや、俺はいい」 なんて言われちゃって。 「だーめ。食べて。そうじゃないと、私が太っちゃうじゃない」 身長が二十センチも高い兄さんより、私の方が沢山食べるなんて、絶対ヤバいわよ。兄さんのほうが明らかに運動量も多いし。 兄さんは邪道とか思っているかもしれないけど、ピザまんだって、けっこうおいしいわよ? 「判った判った、じゃあ、貰うぞ」 肉まんとコンビニ袋で両手がふさがった兄さんは、そのまま身を屈めて、ピザまんにかぶりつく。 「あ、兄さん、ひとくちが大きすぎ!」 「食えって言ったり食いすぎって言ったり、どっちなんだ、お前は」 「べ、別に、事実を言っただけで、文句言ったわけじゃないもん」 「……もうひとくち、食うか? 肉まん」 兄さんは笑いながら、また私に肉まんを差し出してくれたけれど。 「いい、太るから」 なんだか子供扱いされているみたいで悔しくなって、私は首を振って拒絶した。 実際、兄さんに比べればコドモなんだけどね。 「少しくらい太った方がいいんじゃねえか?」 兄さん、それはまるで年頃の娘の気持ちが判らない父親の台詞よ。 「特に胸とか」 兄さん、それはセクハラよ。 「余計なお世話!」 本当に怒っているわけじゃ、もちろんないんだけど。 私はピザまんを左手に持ちかえて右手をあけると、兄さんの後頭部を軽く殴りつけた。 |