デルタ

 他人の色恋沙汰ほどおもしろいものは無いって、至言を残した奴が過去に居るらしい。
 大抵の女子が、何組の誰と何組の誰が付き合って居るなんて話や、恋愛ドラマやマンガの話で盛り上がっているところを見る限り、あながち間違ってもいないのかもしれない。
 が。
 おもしろくない他人の色恋沙汰ってのが少なくともひとつはこの世にあって、それを目の前にイライラしている不幸な少年が存在するって事を、誰かに知ってもらいたい。
 少年の名前は、桜井雅也。つまり、俺だ。
 俺の目の前には、俺と同い年の男がふたり、女子がひとり居る。
 神尾アキラ、石田鉄、橘杏――三人とも、俺の、俺たちの、大切な仲間。
 神尾は杏ちゃんの事が好きだ。これは、誰の目から見ても明かなんだが、狙ったように当の本人である杏ちゃんと、石田が気付いていない(ついでに言うなら、橘さんも)。世の中には鈍感な人間がなんと多いのか。
 石田も杏ちゃんの事が好きだ。これは多分、俺しか知らない。
 そして杏ちゃんも、石田の事が好きだ。これも多分、俺しか知らない。
 つまり俺の目の前では、安っぽいドラマや漫画の中でありふれた三角関係とやらが成立しているわけなんだが。
 ――なんでこいつら、のほほんとしてやがるんだろう。
 俺の目の前で、今日の給食はまずかったとか、明日のメニューはけっこういいだの、今日は帰ったらテレビ何見ようだの、フツーの話をしている三人。
 もっとこう、なんかないのか! 勢い余って告白とか、ライバルを蹴落とそうとか出し抜こうとか、そーゆーのは! お前ら、話としての盛り上がりに欠けるんだよ! おもしろくもなんともないんだよ! どうせつまらないならとっととくっつけ、石田と杏ちゃん!
 そもそもなんで杏ちゃんの隣に座ってるのが俺なんだ? お前らにとってこの席、特等席だろ? 俺は別にそっちでいいんだぜ?
 うーん。色気のない話をしているのは、俺がここに居るせいなんだろうか。違うよな? 俺が居なくてもやっぱり、奴らは給食の話をするだろう。今日の給食のヘンなスープ、確かにまずかったしな。
 あー、つまんねえつまんねえ! いっそ俺がけしかけてやりたいくらいだ。
 でも、アキラはともかく石田と杏ちゃんはかわいそうだから、大人の俺はしずかに見守っていようと心に決めたんだ。決めたんだが。
 ああ、じれったい。イライラする。
 何でお前ら、そうなんだよ! あー、頭掻きむしりたい気分。
「お前ら、まだ居たのか。さっさと帰れと言っただろうが」
 のんびりとした空気を引き裂いて登場したのは、橘さん。
「あ、橘さん!」
「兄さん」
「橘さん、お疲れさまです!」
 三人は橘さんを確認すると、椅子を蹴る勢いで立つ。俺も遅れをとるまいと、立ち上がった。
「もう外は真っ暗になってるぞ。お前らはともかく、杏!」
「暗くなったから兄さんを待ってたんじゃない。こんなカワイイ子がひとりで夜道歩いてたら、あぶないでしょ?」
「……お前なら変質者を殴り倒しそうだがな」
「ひどーい!」
 そんなに嬉しそうに怒る杏ちゃんを、俺ははじめて見た気がする。
 ああ、そうだよな。
 こいつら、三角関係とか、そう言うもん以前に。
 アキラは、橘さんが大好きで。
 石田も、橘さんが大好きで。
 杏ちゃんも、橘さんが大好きなんだ。
 ついでに言うなら、俺も、深司も、内村も、森も、橘さんが大好きで、思いっきり慕ってるんだけどな。
「おもしろいかもしれないなぁ」
「ん? 何がだ桜井」
 橘さんは不思議そうに俺に訪ねてきたけれど。
「いえ、何でもありません」
 言ったら橘さんが困るだろうから、俺は笑ってごまかした。

 デルタを三角形と間違えて書いちゃったので、ボツです。ア、アホですね、私、ホント、真相のアホですよね、すみません(T_T)三角形はトライアングルだっつうの!(笑)
 まあ、勢いで書いてはみたものの、内容的にもあまり気に入っていなかったので、ゴミ箱に入れられてよかったかなあ、なんて思いつつ。
 なんか、最初の「砂礫王国」書いた時は桜井君なんてわかんねーよ! と言っていましたが、今では峰で一番視点がとらせやすい、ラブキャラになってます。時の流れって怖いですね。


ゴミ箱
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