かれを思う三の声

これは、インタビューでもなんでもない。本人から聞き出したわけでも、別にない。
彼らがその男・藤崎佑助について思うこと。

鬼塚一愛の場合。
難しい話やね。でも……そう、例えるんやったら、そやな。
アタシはひとりで泥ん中に立ち尽くしてて、このままではどこに行くにも周りを汚してしまう思っとった。どこにも行けへんって、思っとった。それだのにあいつは、この泥まみれの腕をしっかり掴んで、アタシを引っ張りあげてくれた。

笛吹和義の場合。
ひとりだった。それでいいと思っていた。生身の人と関わるのは面倒だったから。
そうして俺が線を引いて勝手に作り出した領域に、あいつはずかずかと足を踏み入れてきて、俺をそこから引きずり出しやがった。そう。引きずり出して、くれた。

吉備津百香の場合。
あいつかい。あいつね……あいつは、そうだね、遠慮なんてさせてくれなかった。
あたいはこういう性分だから、人と関わるの苦手で。分かるだろ? でも姐さんやあいつはこんなあたいを受け入れてくれて、それで。それで、ここに居ていいって、言ってくれた。

三者三様、ばらばらな答え。
でもひとつ、三者三様、確かなことがある。

――彼の側、ここが居場所。失えない、失いたくない。そのためならきっと、何でもできる。多分。


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