ある夜の数分間

「お兄ちゃん、電話よー。」
「誰からだ?」
「もう“彼”からだったら、誰か説明しないことにしたから私。話が早いでしょう」
「…そうか」
「はい、じゃ後で子機下に返しといてね。あ、お兄ちゃん」
「何だ?」
「携帯電話、今なら安くておすすめ」
「………すまん。考えておく」
「くくく…」
「何笑ってるんだ黒羽」
「杏ちゃん、さらに気が強くなったなぁ」
「…そうだな。最近妙に貫禄が出てきたというか………! 違うぞ、決してそういう意味じゃなくてだな杏 …で黒羽」
「うぁはははははは!」
「……で。今日はどうした?」
「ふっくくく…。いや、特に用って用じゃないんだけどよ。橘、忙しかったか?」
「いや。丁度背筋を伸ばしていた頃だ」
「受験勉強、大変だな」
「お前も同じだろ」
「俺は大変じゃないとこ受けっから。進学校行って、ろくにテニスやる時間もなくなった兄貴分がいてさ。寂しいのなんの…。俺は卒業してもダビとかと遊びてーしよ」
「そうか、そうだな。俺もそんなに縛られるところには行かんつもりだが」
「良っしゃ。」
「何がだ」
「卒業しても、俺がそっちに乗り込む余裕あるってこったろ?」
「心配せんでもそんな都合なぞいつでもつける」
「……ウィ。ありがとよ」
「…。天根は元気か?」
「あ、ああ元気だぜ! 最近ダジャレ替え歌なんかに凝りやがってさ、時々カラオケとか行ったりするとバネさんは大変だよ」
「狭いところで、他の奴が巻き添え食ったりはしてないのか」
「みんなダビの番にはドリンク持って四隅に散る。アイツは普通に歌上手いから、たまにダジャレ無し宣言したときは別だけどな」
「独特だな」
「何ならお前も、あいつら連れて合同ってのはどうだ?俺らは勿論大歓迎だし、このまえ会った時伊武と神尾が声揃えて言ってたんだぜ。橘さんの歌はいい、ってよv」
「…いや、どっちかというとあいつらにこそ敵わん」
「つーか、聴きてぇ。いつか歌ってくれねぇか?」
「♪追ーいーかーけーよう〜〜」
「今じゃねぇよ!!………、声だけだとツッコミに気合が入らねーなぁ…。ボケるのと歌うのは俺の足の届くとこでヨロシク頼むぜ」
「…(歌うのも?)俺は天根と違ってうっかり反撃しかねんが、いいのか?」
「橘らしくて上等じゃん? そのうち一緒に行こうや♪ なんならダビや、最近何かとお前の話題振ってくるサエや亮や…とりあえずお前に会いたがってるあいつらみんな連れだって、こっちが上京すんのもいいし」
「あいつらも喜ぶだろうな。近場でいい店を、神尾と相談しておこう」
「おう。それはそうと。今、そっちの空はどうよ」
「空?」
「千葉はよーく晴れてるぜ。満天の星空だ」
「東京も晴れている。…ジェット機のオレンジがくっきりだ」
「ジェットって言えばよ、コンコルドがこの間。」
「ああ、引退しちまったな…俺はあの猛禽のような形が昔から好きだった」
「しゃーねぇけどな。音速の世界に一度乗ってみたかったぜ…。って、ひょっとして光るものは、それだけかよ? 橘」
「空には、そうだな。この家から星といえば、ざっと一等星か月くらいしか見えんぞ」
「そうだったか…? また、千葉の田舎に泊まりに来いよ」
「ああ。星見に行かせてもらう」
「冬は特にキレーだぜ。それじゃ、勉強の邪魔して悪かったな」
「いいや。それよりそのうち、違う電話番号を教えるかもしれん」
「はーいよ。(小声で)…橘」
「…?」
「………(チュッ)」
「なぁ…!! 黒羽…!?」
「カッカッカッカ。グンナイ」
「…あ、ああ…」

「バネさん、今すごく面白かった」
「おぉ!? なんだ、来てんだったら声かけろよダビデ。橘に代わったのによー」
「いや…笑いを堪えるのに必死で…橘さん?」
「ああそうだ」
「多分最後の辺りしか聞いてなかったけど…キレイだとか受話器にチューとか…もうバネさん、橘さんに決めたのか…? …だったら俺は止めない。是非、橘さんを千葉に呼んでくれ…。千葉、た千葉な…プッ」
「卯月さんのネタを横取りすんじゃ、っねぇ!」
「で!…卯月さん?」
「あれ? 今ふっと降りてきたぞ…」
「じゃ、俺帰るなバネさん」
「もうかよ。何しに来たんだお前」
「この部屋は、さんぽコース、オフコース。今も現役っス小田和ま…! バ、バネさんタンマ…どぅあッ!!」
「てんめネタが本気でオヤジなんだよ!!っつーことで、今日はお開き。」




ラブイ……!
やはり桔平さんは、とっとと千葉に嫁に行くべきだと確信しました(笑)
六角のみんなに愛されて幸せになればいい……!
六人(七人?)の連れ子くらい、
へっちゃらで受け止めてくれるから……!

みふねさん、本当にどうもありがとうございました!


みふねさんのサイトはこちら。
WATZ 0062



Workに戻る  トップに戻る